そこに在る君へ
後編
笑顔を見せてくれたこと、会えて嬉しかったと言ってくれたこと。
今の天国の姿が、犬飼の心に優しく染み渡っていく。
ああ。
(マジで好きだ…こいつ。)
「…猿野…。」
犬飼はまた泣いていた。嬉しかったからか、また別れるからかはわからない。
犬飼は天国をまた抱きしめた。
「ごめんな、一人にして。」
「ああ。」
「辛かっただろ。」
「ああ。」
「もう大丈夫だろ?」
「……。」
すぐには、答えられなかった。
大丈夫といえば、こいつを安心させてやれるだろう。
無理だといえば、またあえるかもしれない。
でも。
犬飼は答えた。
「…ああ。大丈夫だ…。」
「そうか…。」
天国はまた笑った。
犬飼は見えなかったが…気配で、それは感じることが出来た。
本当に大丈夫かは分からない。
だけど、こいつが笑ってくれたから。
オレに会えて幸せだと言ってくれたから…。
大丈夫になって、こいつが笑ってくれてるなら。
「…大丈夫だよ。」
そんな気がした。
「あ、そうだ屑桐さんの弟!あいつ落ち込んでねえか?
それから御柳とかたっつん!
お前もだけど交通事故モロに見てヤバくなかったか?」
「…あのな。」
突然まくしたててきた天国に、犬飼はムードのねえ、と場違いな行動に場違いな感想を抱いた。
だが、これも天国が心配していることだし…。
実際に今言った奴らは天国の死におおきな衝撃を、今も受け続けているのだ。
答えるべきことだった。
「屑桐さんも弟も…今も沈んでるみてえだ。
今日、お前の命日だろ?あれから毎月同じ日に来てくれてるぜ。
それから…御柳と辰も同じだ。
早々立ち直れてねえよ。」
「そっか…だよなあ。」
答えを聞くと、天国は自嘲気味に笑った。
「オレは…オレのやりたいようにして死んだんだから、文句はねえよ。
屑桐さんの弟にはさ、オレが死んだぶんきっちり生きろって言ってくれよな。
アニキを越すくらいにさ。」
「…それ、御柳にも言ってただろ。」
「……なんで知ってんだよ。」
「聞いた。」
「そっか。」
また天国はにこ、と笑った。
「辰や御柳にもよろしくな。
あと沢松と子津と司馬と兎丸と…センパイ方にも、あと凪さん!これも忘れんなよ!
それからセブンブリッジの剣菱さんたちと黒撰もだよなあ…あと…。」
「…お前全部回らせる気かよ。」
「えー、だってさあ。」
「…そんな暇ねえから…。」
「…!!」
突然、天国の身体が光とともに透けはじめた。
「猿…。」
「……オレがいなくてもちゃんとやってけよ?約束しろ。」
消えていく。
犬飼の中をまた喪失感が襲ってきた。
「…約束するから…もう一回キスさせろ。」
「…アホ。」
天国は苦笑して、涙をこぼして。
犬飼はその薄くなって唇に、最後に口付けた。
「…愛してんぞ…アホ猿。」
「二回目のサイゴくらい…名前で…呼べ…よ…。」
唇を離すと、もうほとんど天国は消えかけていた。
「じゃあな…天国…。」
「また…な…めい…。」
そして、いつしか暗くなった夜空に。
一筋の光が上っていった。
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「…会えたのか?」
「…ああ。」
「そう…ですか、で、彼は何と?」
「オレは幸せだったから気にすんな…ってさ。」
「ふふ…彼らしい…。」
「だな。」
「…で?キスくらいはできたのかよ、ヘタレ。」
「…あのな。…できたぜ?ヘタレ返上するくらいのあっつい奴。」
「あぁ?!…やってらんねえなこのやろお。」
「ああ、もう御柳くん!」
そしてオレは、また日々をすごしていく。
あいつがくれたものを大事にして。
忘れねえ。
絶対に忘れねー…。
end
やっと終了しました「黄泉がえり」犬猿話でした。
映画…とは違ってますが、こんな感じで。
大神さんの話も正直入れたかったですがすみません、力不足で…。
トリオさま、素敵なリクエストありがとうございました。
本当に長いことお待たせして、スミマセンでした!!
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